研究シーズの内容
近年、沖縄では肉質や風味に西洋豚とは異なる特長を持つアグー精肉が嗜好される様になり、雄アグーと西洋豚との交雑種「アグーブランド豚」の生産および出荷が増えてきました。一方、純系のアグー飼育頭数はそれほど多くなく、度重なる近親交配の影響と思われる繁殖能力の低下が顕著に認められています。雄アグーでは、一回当りの射出精液量と精子数が非常に少なく、精液中には明確な精子濃厚部画分を有しません。また、夏季(5月下旬~10月中旬)には、元々、西洋豚に比較して劣っている精子性状がさらに悪化し、繁殖に使用できる個体数は激減します。同様に、雌アグーでは、従来の目視による判定法では約50%の割合で性周期の把握が出来ず、多産系のブタでありながら1回の平均出産頭数は4~5頭、しかも、流産・死産や奇形胎児の割合が非常に高い状態です。すなわち、アグーを西洋豚で一般的に行われている交配法で通年的に増産することは、非常に難しい状況に陥っています。
当研究室では、「ウシおよびブタ卵子の初期発生にかかわる生理・生化学的要因に関する研究」や「沖縄在来豚アグーと種牛の効率的増殖に関する研究」に取り組んでおります。これまでの研究によって、アグーを含むブタの精子の凍結保存ならびに人工授精技術を確立し、冬季に採収・凍結保存した精子を使用した夏季における人工授精の有効性を実証しました。
実用化イメージ
分野および用途
● 養豚業に用いるカスタムメイドよる人工授精用凍結精子の作製、提供等
関連する特許や論文等
(1)Anti-hyaluronidase oligosaccharide derived from chondroitin sulfate A effectively reduces polyspermy during in vitro fertilization of porcine oocytes. Biology of Reproduction, 72, 127-134, 2005.
(2)Improvement of the post-thaw qualities of Okinawan native Agu pig sperm frozen in an extender supplemented with antiapoptotic PTD-FNK protein. Theriogenology, 78, 1446-1455, 2012.