研究シーズの内容
日本にはおよそ40種類のツツジ属植物が自生しています。それらの交配によって作られたツツジやサツキなどの園芸品種の花色は白、桃~赤紫色など様々ですが、黄色花を持つ種は存在しません。これまで、常緑性ツツジ種に落葉性のキレンゲツツジを交配することによる育種が試みられてきましたが、交雑不和合性があるため、うまくいきませんでした。
当研究室では雑種実生獲得のために交雑不和合性の要因解明に取り組み、常緑性ツツジ種を種子親に用いたときのみ種子が得られることを明らかにしました。さらに、得られる実生のほとんどが核内のDNAと葉緑体内のDNAの不和合性によって開花まで生育できないアルビノ実生となることを明らかにしました。これに対して、常緑性ツツジ種の種間雑種を種子親に用い、キレンゲツツジを交配する三系交配によって緑色雑種実生を得ることに成功しました。この雑種実生の花弁は、キレンゲツツジからカロテノイド生合成遺伝子を強く発現する能力が遺伝したことにより、蕾から開花当日まで比較的濃い黄色の花色を示します。しかし、開花後、日数の経過とともに花弁の黄色は薄くなり、白色に近づきます。これは、常緑性ツツジから遺伝したカロテノイド酸化開裂酵素遺伝子(CCD4)の働きによるものです。現在はCCD4遺伝子の発現を抑制させるための研究に取り組んでいます。
実用化イメージ
分野および用途
● 交雑不和合性の要因解明による遠縁交雑育種
● これまでにない花色を持つ花卉園芸作物の育種
関連する特許や論文等
1)Ureshino, K., M. Nakayama and I. Miyajima. (2016, 1)
Contribution made by the carotenoid cleavage dioxygenase 4 gene to yellow colour fade in azalea petals. Euphytica 207:401-407.