研究シーズの内容
頭足類(イカ・タコ)は、日本での年間消費量がトップクラスの水産物で、世界的にも主要な水産資源です。一方で、近年の過剰な漁獲圧や気候変化などで頭足類の漁獲量は減少しています。一策として養殖が考えられますが、意外にも頭足類は養殖されていません。彼らはとてもデリケートな動物なのです。実は、頭足類は神経系が発達した巨大脳の持ち主で、欧州では古くから知的な動物として知られ「海の霊長類」の異名を持ちます。
私たちの研究室では、頭足類の知性に注目し、ユニークな行動や脳について調べています。研究を進める上で私たちが拠り所としているのが、頭足類を自分たちで飼育し、生きた姿を詳細に観察する飼育実験です。これは、頭足類を卵から孵化させ大人になるまで育成するという長期飼育を完全閉鎖型濾過循環システムで行うものです。頭足類は人工環境に弱い動物なので、私たちの取り組みは世界的にも稀有なものです。研究を通じて、私たちはイカやタコの不思議を解明し、それを養殖技術に活かしたいと考えています。
実用化イメージ
・アオリイカ、コブシメ、ウデナガカクレダコなど沖縄産の頭足類の完全養殖(卵から成体までを人為管理下に置く)。
・沖縄産の頭足類の高成長蓄養(成長段階のある時期を人為管理下に置き、高成長させて付加価値をつける)。
・頭足類の水産物、実験動物としての供給システムの開発(沖縄産頭足類を日本本土、アジア各国などに水産物として流通させる。また、実験動物として大学、研究所へ供給する)。
関連する特許や論文等
池田 譲「イカの心を探る-知の世界に生きる海の霊長類-」日本放送出版協会, 東京. 2011.
池田 譲 頭足類学という夢路. 化学と生物 53 (9), 614-618, 2015.
池田 譲 頭足類の巨大脳と行動が語るところ. 認知神経科学, 10, 261-266, 2008.