研究シーズの内容
1997年鹿児島県北西部地震や平成28年熊本地震は,大地震が連続発生し得ることを示した。現行の耐震設計は大地震の連続襲来を想定しておらず,また,近年では大地震後の建築物の継続使用に対する要求も高まっている。本研究では,「(コンクリートをあらかじめ締付ける)能動横拘束」を研究の重要なキーワードに置き,地震で傷ついた建築物を対象として,鉄筋コンクリート(RC)部材のひび割れを閉合し得る機動的な応急補強法の研究開発を行っている。
ここで,能動横拘束とは,緊張材などの横拘束材でコンクリートをあらかじめ材軸方向と直交方向に締付けることであり,その結果得られる横拘束効果を能動横拘束効果と呼ぶ。それに対して,帯筋や鋼管などのようにコンクリートが膨れて初めて横拘束効果が発揮される従来の横拘束効果は受動横拘束効果と呼ばれる。
本研究では,緊張材(ベルト)による能動横拘束を地震で損傷したRC 柱の「ひび割れ閉合」に応用しており,このまでの研究では,「ひび割れ閉合」が損傷RC柱の鉛直荷重支持能力やせん断強度を修復し,補強後の損傷RC柱が曲げ破壊となることが確認されてきた。
図1 ひび割れを閉合し得る機動的な応急補強法
実用化イメージ
地震被災直後に機動的に応急補強を施すことで,余震によるRC造建築物の損傷進行を食い止め,地震で傷ついた建築物の安全と住んでいる人の安心を確保する。
関連する特許や論文等
(1)中田幸造,山川哲雄,喜屋武徹,NOORI Mohammad Zahid:緊張材で能動横拘束された損傷RC柱に関する実験的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol. 41,No. 2,pp. 1201-1206,2019
(2)中田幸造,山川哲雄,喜屋武徹,金田一男:緊張材で能動横拘束された損傷RC柱のせん断強度に関する実験的研究,コンクリート工学年次論文集,Vol. 42, No. 2,pp. 805-810,2020
(3)高強度緊張材で能動拘束された損傷RC柱の圧縮性能とせん断伝達機構の解明,科学研究費補助金基盤研究(C),2016年度~2019年度
(4)緊張材の能動横拘束で地震損傷RC部材のひび割れを閉合する機動的な応急補強法の開発,科学研究費補助金基盤研究(C),2020年度~2022年度