研究シーズの内容
沖縄県において、マラリア、フィラリア、日本脳炎、デングなど、蚊が媒介する感染症は戦後復興の本丸の一角であったことに疑問を呈するものはいない。不衛生な状況下でこれらの蚊媒介性感染症により多くの命が失われ、沖縄の公衆衛生を担った先人たちの血の滲む努力により感染症は撲滅または制圧された。しかし、現在においても亜熱帯気候の沖縄には病原体を媒介可能な蚊が生息しており、また、アジア貿易の一路であり、観光立県を標榜する沖縄には、多くの人や物が感染症流行地より流入するため、いつ流行が生じても不思議ではない。2014年の東京・代々木に端を発したデング流行のパニックは記憶に新しいにもかかわらず、危機意識は薄い。流行に備えるためには、蚊のモニタリングにより、蚊の種類と分布を把握する必要がある。蚊を分類には、時間とコストがかかるバイオ技術を用いるか、顕微鏡下の形態分類を行う必要があるが、これには熟練した技術を要し、高齢化や人材不足が深刻な学問分野である。
本研究では、高通信量・高速度通信化が可能とした高精度画像データの瞬時の共有、利用、解析ができるシチズンサイエンスのプラットフォーム「iNaturalist vector project」と連携し、機械学習を用いた蚊の画像分類システム構築を目指している。深層学習モデルを用いることで、より精度の高い画像分類システムの構築が可能。
実用化イメージ
蚊媒介感染症サーベイランスで活用できる蚊の画像を用いた形態分類システム
関連する特許や論文等
蚊媒介性感染症対策におけるシチズンサイエンスの可能性—蚊の画像分類システム試作
斉藤美加, 西銘大喜, Jakub Kolodziejczyk,小林潤, 大西敬吾、第52回日本脳炎ウイルス生態学研究会2019/5/24,25