研究シーズの内容
急性心筋梗塞は我が国の主要な死因の一つである。近年の高齢化に起因して、急性心筋梗塞の罹患率は年々増加の一途を辿っている。急性心筋梗塞の死亡率は、医学が進歩した現在においても、約30%と依然非常に高い。この理由は、急性心筋梗塞を発症した患者のほとんどが、病院に到着する前に突然死するからである。従って、急性心筋梗塞の征圧には、当該疾患の予防戦略の研究開発が極めて重要である。しかし、実験に有用な急性心筋梗塞を発症する動物モデルが全くないために、その研究開発は大きく立ち後れている。
慢性腎臓病患者は早期に急性心筋梗塞を発症する。基礎研究では、腎臓を亜全摘した動物が、慢性腎臓病モデルとして使用されている。我々は、一酸化窒素合成酵素完全欠損マウス(triple NOSs-/-マウス)における腎臓亜全摘(2/3腎摘)の効果を検討し、2/3腎摘triple NOSs-/-マウスが術後4ヶ月以内の早期に約90%と高率に急性心筋梗塞を発症することを見出した。我々の2/3腎摘triple NOSs-/-マウスは、創薬研究に有用な世界初の急性心筋梗塞を発症する動物モデルである。このモデルを用いれば、急性心筋梗塞の予防に有効な医薬品の研究開発を、幅広く実施することが出来る。
実用化イメージ
分野および用途
・製薬メーカー、ベンチャー企業等
・急性心筋梗塞の発症予防に有効な医薬品や治療法の研究開発に有用な動物モデル
関連する特許や論文等
1)Development of an experimentally useful model of acute myocardial infarction: 2/3 nephrectomized triple nitric oxide synthases-deficient mouse. J Mol Cell Cardiol 77: 29-41, 2014