研究シーズの内容
近年のエネルギ枯渇問題や地球温暖化問題により、水素エネルギ社会の確立に向けた流れは速まっている。水素をエネルギとして使用する上で、必要不可欠なのが燃料電池である。燃料電池の中でも個体酸化物燃料電池(SOFC)は、他の燃料電池よりも高い発電効率を有することから、主に工場などで大規模発電装置として用いられている。通常SOFCは、電解質膜(EM)である個体酸化物中を酸素イオンが移動することで発電するが、近年このEM中にプロトン(水素原子)を挿入しプロトンを伝導させることで発電するプロトン伝導SOFCが提案されている。
プロトン伝導の場合、原子量が小さいことによる量子効果を無視することができないため、本研究では、セントロイドMD(CMD)法を用いた分子動力学(MD)シミュレータを構築し、様々な個体酸化物EMの構造や構成中におけるイオン伝導現象のメカニズムの解明に取り組んでいる。プロトンの量子効果がその伝導に与える影響とメカニズムが明らかにされれば、従来の古典的な手法では把握できない新規な特性を発見できる可能性があり、これまでにない新しい個体酸化物EMの設計や、プロトン伝導SOFCのさらなる高効率化につながると考えられる。
実用化イメージ
● MD法を用いたナノスケールの熱流動現象の解析
● 高分子膜や水素貯蔵合金中でのプロトン輸送メカニズムの解明
● カーボンナノチューブなどを用いた新しい水素貯蔵技術の確立
関連する特許や論文等
1)水素のミクロ・マクロ熱流動特性に対する量子効果発現メカニズムの解明に関する研究, 科研費 特別研究員奨励費, 2013-2014
2)確率論的手法による固体酸化物電解質膜におけるプロトンの量子ダイナミクスの解明, 科研費 若手研究(B), 2016-2018